印鑑の彫刻方法について
《商品としての完成度とコストパフォーマンスを両立させた彫刻方法「手書き文字手仕上げ」》
《コストパフォーマンスを重視した彫刻方法「機械文字手仕上げ」》
当店では、「手書き文字手仕上げ」の彫刻方法で作製しています。
印鑑の彫り方では、よく手彫りとか機械彫りとかいいますが、細分すると4つに分けられます。下の表でその彫刻方法をご紹介致します。 左から、完全機械彫り・機械文字手仕上げ・手書き文字手仕上げ・完全手彫り、の4とおりです。
実際には「字入れ」と「仕上げ」の前に面すりや朱うちや墨うちの作業があるのですが、それらは当然どの方法でもするものとして省いています。
完全機械彫り | 機械文字手仕上げ | 手書き文字手仕上げ | 完全手彫り | |
1.字入れ (文字デザイン) |
パソコンフォントで レイアウトします |
パソコンフォントで レイアウトします |
倍寸で文字を 手書きします |
印材に直接鏡文字を 書き入れます |
2.あら彫り (文字以外の 部分を彫り下げる) |
自動彫刻機で彫刻 |
自動彫刻機で彫刻 |
自動彫刻機で彫刻 |
文字通り手で彫ります。 根気のいる作業です。 |
3.仕上げ (外枠や細部 を修正する) |
なし |
外枠を細く削り文字の 形を整える |
外枠を細く削り文字の 形を整える |
外枠を細く削り文字の 形を整える |
完成 |
彫刻システムさえあれば 誰にでもできます。 |
手仕上げすることで 変化をつけられます。 |
手書き文字なので出来 上がりは完全手彫りと あまり変わりません。 |
技術を学んだ職人に しか出来ません。 |
この彫刻方法の中で単純に「手彫り」と言える方法は「完全手彫り」しかありません。
しかし「機械彫り」と「手彫り」の2種類に大きく分けるとすると、「手書き文字手仕上げ」は手彫りの内に入れてもいいのではないかと思います。
すなわち、「完全機械彫り」と「機械文字手仕上げ」が機械彫り、
「手書き文字手仕上げ」と「完全手彫り」が手彫りということになります。
ここで、手彫りと機械彫りの違いについてご説明いたします。
手彫りと機械彫りの違い |
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手彫り | 機械彫り | |||||||||||||
同じ文字 同じ書体 の場合 |
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外枠の太さ |
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コスト | 経験を積んだ職人しか出来ないので、 時間的にも金額的にもコストがかかります |
パソコンを使える人なら素人でも 出来るのでコストがかかりません |
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時間 | 手作業なのでそれなりに時間がかかります | あっという間に出来上がります |
手彫り | 機械彫り | |
メリット |
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デメリット |
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以上のことから、早くて安いが、文字はパソコンフォントでよいという方には機械彫りがおすすめです。
多少高くても、手書き文字による唯一無二の印鑑がよいという方には手彫りがお勧めです。
印鑑(はんこ)の彫刻方法の歴史
昭和40年代前半までは、はんこは完全手彫りしかできませんでした。もちろんゴム印も手彫りです。
修行を積んだ職人が直接文字を書き、手で彫るものですから、1日で5~6本彫るのがせいぜいで、
ゴム印作製もあると印鑑は1日2~3本できるかどうかです。そのぶん価格は現在よりかなり高額でした。
光電機の登場
昭和40年代後半ごろに、内外精機という会社から光電機(こうでんき)という印章彫刻機が発売されました。(当店にもあります)この機械は、透明なフィルムかトレーシングペーパーに墨で文字を書き、機械にセットすると、
書いたとおりに彫刻するというものです。透明な部分を光で感知して回転する細いドリルが下がり、
黒い文字のところで上がることで彫刻します。この彫刻では、ドリルの直径分文字が細くなります。
したがって、少し太めに書かなければなりません。また、狭いところも広いところも同じ深さになるので、
文字を書くとき狭い部分はより太くしたり、塗りつぶして仕上げで削るなどの工夫が必要です。
しかし手で彫るのに比べると格段に作業能率が上がり、1日に10本~20本の印鑑作製が可能になりました。
でも文字を手書きするという作業と最終仕上げ作業は、経験を積んだ職人でなければ出来ないので、
まだ印鑑価格は現在ほど安くなっていませんでした。
現在この機械は販売されていません。
印章彫刻ロボットの登場
昭和60年代前半ごろに、コンピューターに専用彫刻機をつないで内臓フォントで彫刻する機械(通称ロボット)が発売されました。これはかなり高額で、一般の印章店が簡単に買えるようなものではありませんでした。(2000万ぐらい)
メーカーとか、大規模に事業展開している一部のはんこやが導入するぐらいでしたので、
一般のはんこやではまだ光電機が主流でした。
平成元年ごろからパソコンの進歩とともに彫刻ロボットも安価なものが開発され始め、少し思い切れば小さな印章店でも
手が出せるぐらいの金額になってきました。(400万~800万)
と同時にカタログ通販などでは安い印鑑が販売されるようになりました。
低価格パソコン印章彫刻機の登場とインターネット通販の普及
平成7年にウインドウズ95が発売され、インターネットが普及すると、インターネット通販サイトが無数にできて、価格競争が勃発しました。でもまだ初期のころは日本のインターネット人口が100万人ぐらいでしたので、
インターネットで買い物をする人はあまり多くありませんでした。ウインドウス98、me、XP・・・とパソコンの高性能化、
低価格化が進むと、インターネット人口も爆発的に増え、ネット通販人口もかなり多くなりました。
パソコンの低価格化と同時にパソコン印章彫刻機もかなり安くなりました。(120万~250万)
これなら光電機並の価格で買えるということで、一気にパソコン印章彫刻機の普及が進んだと思われます。
しかし、だれでも彫刻機を持てるようになり、パソコンフォントで印鑑ができるとなると、職人でなくても出来るわけです。
アルバイトやパートでも、少しパソコン操作を習えばだれでも印鑑が作製できます。
しかも早く出来るということで、ネット通販では価格破壊が進み、過当競争に陥っています。
景気の低迷が価格破壊に拍車をかけ、ありえないほどの激安品が出回っています。
そうした激安品を「手彫り」と謳って販売しているのは、消費者を騙していることになります。
「完全機械彫りでバイトが作るからこの値段」と正直に言えばいいのですが、言うわけありませんよね。
当店の彫刻方法
当店では、「名工Ⅳ」という機械を数年前から使用しています。光電機も健在です。「名工Ⅳ」はパソコンフォントでも彫刻できる機械ですが、パソコンフォントでは文字が良くないし、
同じ名前で同じフォントの場合、同じ印鑑が出来ます。修正はできるのですが、
思うようなデザインにするためには手で書いたほうが早いので、手書きした原稿をスキャナーで読み込み、彫刻しています。
もちろん最終手仕上げもきちんといたします。
完全手彫りとの違いは、彫り下げる作業を手でするか機械にまかせるかということだけです。仕上がりは完全手彫りとなんら変わりありません。
また、当店でも激安品に対抗するため、コストパフォーマンスを重視したパソコン文字での彫刻(機械文字手仕上げ)を販売いたします。パソコン文字とはいえ1本1本丁寧に修正を加え、手仕上げした印鑑です。
唯一無二の御印章は1級印章彫刻技能士の当店におまかせください。